『中論無畏疏』の一節

縁起論とは、 滅なく、生なく 断なく、常なく 来なく、去なく 異義にあらず、一義にあらず と説かれた。    


(一)滅なしというのは、縁起のつながりの中に消滅ということがないからである。なぜなら、そこに発生ということがないからである。
(二)発生がないというのは、消滅がないからである。    
(三)断なしというのは、種子と芽の関係のようであるからである。    
(四)常なしというのは、種子と芽との中間にある存在のように変化していくからである。    (五)来なし、去なしというのは、縁起が空のようであるからである。    
(六)異義にあらずというのは、穀物の粒のごとくに、差異はそのままにして同一性であり、 
(七)一義にあらずというのは、穀物の種子のごとくに、同一性はそのままにして差異であるからである。(龍樹『中論無畏疏』)